第58回岩手読書感想文コンクール小学校高学年・最優秀賞
平和を祈る阿修羅像
盛岡市立永井小学校5年
土田 朝日
列車にのった阿修羅(あしゅら)さん
ぼくは、幼い頃から仏像にきょう味があり、様々なお寺や博物館で仏像を拝観してきました。奈良のこう福寺の阿修羅像も、三度拝観したことがあります。その阿修羅像に、うでが修復されたり、四度の火災から奇跡的に救われたりという歴史があることは、本やパンフレットで読んだことがあり知っていました。しかし、列車に乗ったという話は聞いたことがなかったので、この本がとても気になりました。
読んでみると、日本が太平洋戦争をはじめた頃、仏像を空しゅうから守るため、安全な場所にひ難させよ、という国からの通達があったと書いてありました。しかも列車で民家の土蔵へ…ぼくはおどろきました。そ開は人間だけではなかったのです。そしてあの阿修羅像が本当に列車に乗っていたなんて…。おどろきと同時に、戦争中に仏像のそ開を決断したお坊さんたちも、受け入れ先の方たちも、どちらもものすごく勇気がいっただろうと思いました。信こうの対象である仏像をお寺から動かしていいものか、運んでいる途中でこわれないか、そ開先でぬすまれないかなど、心配なことは山ほどあったと思います。調べてみると、実際にそ開に応じず一~二体を残したお寺があったり、名古屋には空しゅうでつぎはぎだらけになってしまった仏像が存在したりすることが分かりました。それを知りぼくは、仏像のそ開의決断に目を向けることよりも、大切なのは二度と戦争を起こさないために行動することだと気がつきました。
戦争は悲しみとむなしさしか残しません。兵隊にあこがれ、いつも日本は大勝利と聞かされ続けていたのに、終戦後に日本はまちがっていたと言われた総一郎が、大人の言うことを信じられなくなるのはあたり前です。自分だったら頭の整理ができずこんらんし、冷静でいられないと思います。それでもその時代を生きた子どもたちは、苦しさを乗りこえ成長していかなければならなかったと考えると、つらい気持ちになります。今でも世界のあちこちで戦争が起こっています。本の中のお坊さんが総一郎に言った〝戦いからは、なにも生まれません。にくしみがにくしみをよび戦いが続くだけですから。〟という言葉に、ぼくはとても共感しました。この言葉が世界中の人に届くべきだと強く思います。
この本を読む前のぼくの阿修羅像の印象は〝おだやかで、みんなを守ってくれそうな仏像〟でした。しかし、この本を読み阿修羅像がもともとインドの戦いの神様で、おしゃか様の話を聞き悔い改め、平和を祈る神様になったことや、総一郎のように戦時中を生きた人々の悲しみや怒りを受けとめてきた歴史があることを知りました。今は、三面の表情から、強く平和を願う意志を感じます。ぼくも、阿修羅像と共に平和を祈り続けたいです。
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